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浅野いにお「零落」感想。人の闇にとことん付き合う浅野作品の世界

 

こんにちはシオリです。

 

実はこの前、めちゃくちゃ久しぶりに漫画を買いました!その漫画というのが

 

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浅野いにお「零落」

 

ソラニン」や「おやすみプンプン」でおなじみの浅野いにお先生の漫画です。

 

浅野先生の漫画は自分が漫画家を目指していた時にめちゃくちゃ読み込んでいたので個人的に思い入れがとても多い作家さんの一人です。

 

www.ultrac2017.com

 

そんな作家さんが描く「漫画家」を題材にした作品ということもあり、表紙を見た瞬間読んでみたい!と思い立ち気がついたらアマゾンでポチってました。

 

ということで今作「零落」と浅野いにお先生の漫画について語っていこうと思います!

 

私が思う浅野いにお作品の魅力

 

浅野先生の作品は私の中で平凡な若者達が持つくだらない自尊心や消失感を、恥ずかしいほどに剥き出しに表現した漫画という印象です。

 

世間では「雰囲気漫画」や「おしゃれ漫画」と揶揄されることも多いですが、生活の中に生じる鬱屈とした感情をリアルに描くことに関しては本当に天才的。

 

ソラニンでは夢を追う若者の虚無感や焦り。

おやすみプンプンでは一人の人間の人生を徹底的に重苦しく描いてきた浅野先生。

 

現在連載中の「デデデデ」も、現実離れした世界観+キャラクター性の強い登場人物にも関わらず、現代の若者がハッとするようなセリフが作中に散りばめられています。

 

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私は「ソラニン」で浅野先生の漫画を始めて知ったのですが、夢と現実の中で葛藤する主人公達の姿と、なかなか漫画製作がうまくいかない自分を完全に重ねて読んでました(笑)

 

浅野作品には基本的にわかりやすい救いのあるラストも、ドラマチック性も無ありません。でもだからこそ、自分の生活を重ねてしまうんです。

 

人の心の闇を理解するわけでもないし救い出してくれるわけでもなく、ただ闇の中に一緒に落ちてくれる。そんな漫画を描く作家さんだと思います。

 

「零落」あらすじ

 

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浅野いにお、衝撃の新境地へ--
ある漫画家の、脇目もふらず駆け抜けてきた連載が終わった。
久しぶりに立ち止まった自分に残されていたものは、
残酷なまでの“空虚感"だった。
大切な存在ほど信じ切れず、束の間の繋がりだけに
縋り始める日々―――
漂流する魂が着地した時、男の本当の姿が現れる。

浅野いにお、極限の最新作。

 

引用:零落 | 小学館

 

八年間の連載を終えた深澤という漫画家のその後の日常を描いた作品。

 

“元”人気漫画家として世間から扱われ、妻との関係にもすれ違いが生じ鬱屈とした日々を送っていた深澤はある日風俗店でちふゆという女と出会う。

 

自分のことを深く探索せず、肯定も否定もせず「あなたはあなた」だと言って笑うちふゆの存在に嵌って行く深澤。

 

学生時代の彼女に似たちふゆの猫のような目に苦手意識を抱きながらも、会いに行ってしまう。ちふゆといる時間は深澤にとって、行き先のわからない辛い現実と向き合わなくていい時間でした。

 

ある日深澤はちふゆと一緒にちふゆの故郷に行くことへなり・・・。

 

ちふゆを通して、より鮮明になる「漫画家」としての自分とその苦悩。向き合いながら日々を過ごす深澤の日常が静かに描かれています。

 

感想(ネタバレあり)

 

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「漫画家だからって漫画を愛している前提で話すの、やめてもらえませんか?」

 

深澤のそんなセリフが印象的でした。漫画家として、漫画家だから悩み苦しんできた深澤にとって漫画は「愛している」対象ではないんだと。苦しみでもあり、喜びでもあるただの「生活」なのだということが伺えます。

 

この漫画、あらすじを文字にするのがとても難しいなと書いていて思いました。「ちふゆ」は明らかに深澤の中で特別な存在なのですが、ちふゆに感化されて何かをするわけでも考えが変わったり影響を受けるわけでもないからです。

 

ただ深澤はちふゆと一緒にいたがります。

ちふゆといる時間はただの休息なのです、きっと。

 

その休息はちふゆが自分のことを漫画家だと知るまで。それ以降二人は会うこともなくなります。

 

深澤とちふゆ、二人の物語のように見えてちふゆは一切深澤の人生の本質に関与してこないんですよね。実際はただただひとりの「漫画家」の人生が描かれているだけです。

 

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深澤の漫画への向き合い方は他人が見るととても冷めているようにも見えます。

 

物語の最後の方、売れっ子漫画家として返り咲いた深澤の「馬鹿でも泣けるように描きましたから」「この程度の媚びた漫画が丁度いいんでしょうね」というセリフに呆れたような表情を見せる書店員。

 

深澤は長い漫画家生活の中で「結局は売れるものを描けばいい」という結論にたどり着きます。

 

自分の漫画を良いと言う人を馬鹿にするような、作家としての人格を疑うような考え。でも最後、自分の長いファンである読者の「先生の漫画に救われた」という言葉に深澤は涙を流します。

 

売れるために描いた、愛してもいない漫画。でもそれを作るために彼は人生の全てを注いできたんです。

 

「君は何にもわかってない・・・」そう言って涙ぐむ深澤。本当にこのシーンは印象的でした。

 

いつからか好きなことが苦悩に変わり、苦しんで悩んで、でも嫌いにはなりきれなくて、もう抜け出せないほどに自分の人生の全部になってしまう。「零落」は好きなことを仕事にするということの本質が描かれた漫画だと思いました。

 

最後に

 

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 ということで「零落」について今回は書いてみました~。久々に浅野先生の漫画を読んでみて思うのは、生きている人全てがひとりひとり悩みながら生きているんだということ。

 

その年齢、瞬間によって新たな悩みが生まれます。

逆に固執していたことが突然どうでもよくなったり。

 

私も、昔は共感しまくった「ソラニン」を今読んでみると、今は全く種田や芽衣子に共感できなくて。理由はきっと私自身が夢を追うことをやめてしまったからだと思うのですが。

 

社会人としての楽しさとか大変さを知って、考えも変わってしまったんだと思います。でもそれって全然悪いことじゃないし、きっとソラニンに描かれた世界観を一生理解できない人もいるわけです。

 

そういう理解できないことは無理に理解してもらおうとせず、理解できる人だけでただ分かち合えればいいんだと思います。

 

浅野先生の漫画は大衆が良かった!という漫画ではありませんが、その漫画の主人公の心情に近い場所にいる読者にはとてつもなく鋭く鋭利に突き刺さります。

 

共感できた人たちにとって、ストレスまみれの日常の中で受ける嫌な感情を吐き出す場所をくれる、浅野作品は私にとってそんな漫画だな~と思いました。

 

 

 

最後まで読んで頂いてありがとうございました!